泉眼無声惜細留(泉は水を惜しんでいるのか、少しずつ流れている)
南宋の楊万里の七言絶句「小池」———
「泉眼無声惜細流、樹陰照水愛晴柔。小荷才露尖尖角、早有蜻蜓站上頭。」
「泉は水を惜しんでいるのか、少しずつ流れている
樹はその影を水面に落として、晴れた日の美しい風景を愛でている
蓮の葉の若芽が水面から突き出ていると
トンボが飛んできてもう止まっている 」
素朴で飾り気のない詩だが、片田舎の村の風景を細やかに描いている。静かな流れが岩陰の泉から湧き出て流れているが、その泉の穴はじっと動かず、もう戻ってこない水を惜しむかのように悲しそうに見つめている。その水の流れが集まってできた小さな水溜まりに樹々の影が映っている。この樹々の陰はゆったりと楽しそうで、柔らかな日差しの中で流れに乗って踊るように揺らめいていて、何とも美しい様子だ。見れば、蓮の新芽が水面から突き出ている。そしてその先にはトンボが止まって、その姿はなんと優雅なことか!
南宋の政権は江南に根拠地を置いた。江南一帯、特に江蘇省浙江省は豊かな土地で、歴史的に「上有天堂,下有蘇杭(上には天国があり、下には蘇州と広州がある)」と、江蘇省の蘇州と浙江省の杭州を称賛している。日本の遣唐使が中国の文明を日本に伝えて以来、宋代になっても仏教界の僧侶の交流が続き、文化交流にまつわる美談も多く伝わっている。そして近代になって、日本の著名な詩人西城八十による「蘇州夜曲」は誰もが知る歌である。「水郷蘇州の花が落ち、金の音が舘山寺に響く」という情緒豊かな境地は「小池」と相通じるものがあるようだ……
(編集者:秦川)