それぞれの漢字には「部首」がある。たとえば漢和辞典を引こうとすれば役に立つ。
たいていの場合「きへん」や「さんずい」あるいは「うかんむり」「あめかんむり」などのように、漢字の書き順でいえば早い段階ででてくるものだ。
ところが「愛」という漢字の部首は、真ん中にある「こころ」になっている。
たしかに、書き順で「心」が後になって登場する「思」「悲」「怒」「恐」「恋」といった漢字はいくつもある。その一方で「情」や「慎」といった、気持ちをあらわす漢字に使われている「りっしんべん」の書き順はやはり最初である。
では「愛」という漢字の上と下の部分は何か?
調べてみると、これは人がふりむいたようすをあらわした「炁(き)」という文字が変化したものだそうだ。そして「心」の下にある「夊」は、人がゆっくり行くことをあらわしている。つまり「愛」という漢字は「人が何かに心を留めながら、あるいは何かを気にしながら、立ち止まったり、振り返ったりするようすをあらわしているということだ。
いまどきは「愛」といえば「LOVE」あるいは「恋愛感情」をイメージしがち。だがどうやら「愛」には、それ以外の意味もふくまれていると考えたほうがよさそうだ。
もっとも、現在でも「親子愛」「兄弟愛」「師弟愛」「郷土愛」「母校愛」「愛煙家」といった言葉もしばしば使われるから「愛=LOVE」というわけでもなさそうだ。
愛といえば、チャールズ・チャップリンの言葉を思い出す。
あるとき、インタビューで「人生で成功するうえで必要なものは?」と尋ねられたチャップリンが「愛と勇気と少しのお金」と答えた話だ(このやりとりには諸説あり、インタビューではなく、チャップリンが「人生に必要なものは、愛と勇気と少しのお金だ」と語ったという説もある)。
チャップリンといえば「世界じゅうを席巻した喜劇王」として語られがち。だが『キッド』『街の灯』『ライムライト』といった、涙をさそう名画も忘れることはできない。たしかに、その底流にあるのは「人生に必要なものは、愛と勇気と少しのお金」と感じる。
漢字の話からチャップリンの映画にまで話が広がってしまったが、本稿は「雑記」なので、広い心と深い愛情でお読みいただければ幸甚。