第58回となる雑記で採り上げたいと目論んでいたのが、EF58形電気機関車である。1946(昭和21)年の登場時には、デッキ型の電気機関車だった。一旦、製造が中止されたのち、流線型の車体となって再登場。それまでの電気機関車と異なるフォルムは画期的といえるだろう。
高速走行にも優れ、電化された東海道本線の特急列車を牽引する花形機関車となり「ゴハチ」の愛称で親しまれた。高崎線、上越線、信越本線、東北本線、山陽本線など、多くの直流電化区間で活躍し、当然、鉄道ファンの人気は絶大だった。
60号機、61号機は、お召専用機となり、天皇陛下、皇族、そして海外の王室関係者が来日したときにご乗車になる列車を牽引した。
1948年までに、172両が製造され、各地で活躍したゴハチだったが、時の流れには抗えず、経年劣化や後継機の誕生により、廃車も進む。
とはいえ、保存されているゴハチも少なくはない。たとえば、群馬県安中市の碓氷峠鉄道文化むらには172号機が、埼玉県さいたま市の鉄道博物館には89号機が、愛知県名古屋市のリニア・鉄道館には157号機が、京都市の京都鉄道博物館には150号機が展示されており、現役時代の姿を見ることができる。
さいたま市にあるJR東日本大宮総合車両センターの近くには、歩道に面した場所に158号機の前頭部が、EF15形電気機関車の168号機の前頭部とともに設置されている。
EF15は、1947(昭和22年)から1958(昭和33年)まで製造された貨物列車牽引用電気機関車だが、電気機器などの多くがEF58形と共通設計となっている。つまり「姿は違うが、じつは兄弟」ともいうべき存在。現役を引退した兄弟が、仲良く並んで余生を過ごしているようなシーンである。