1886(明治19)年2月20日、現在の岩手県盛岡市で石川啄木が誕生している。歌集『一握の砂』や『悲しき玩具』などで知られる歌人・詩人で「三行詩」という独特の表現で、多くの短歌を残している。
「東海の小島の磯の白砂に
われ泣きぬれて
蟹とたはむる」
「たはむれに母を背負ひて
そのあまり軽きに泣きて
三歩あゆまず」
「はたらけど
はたらけど猶わが生活(くらし)楽にならざり
ぢつと手を見る」
など、昨今のご時世に通じるような作品も少なくない。
上野駅はしばしば「東京の北の玄関口」と呼ばれる。たしかに、東北本線、常磐線、高崎線・上越線、信越本線といった北へ向かう列車、しかも、かつては多くの長距離列車が発着していた。
上京した石川啄木も上野駅のホームに降り立ったはずだ。
岩手、東京、青森、北海道など、啄木は各地を転々としている。それはまた、数奇な運命をたどった人生のあらわれといえるかもしれない。その啄木は、1912(明治45)年4月13日に26歳の若さで、この世を去っている。
上野駅には『一握の砂』におさめられた和歌の刻まれた碑がある。
「ふるさとの 訛なつかし
停車場の 人ごみの中に
そを聽きにゆく
啄木」
1985(昭和60)年3月14日に、東北新幹線が上野に乗り入れたことを記念して3月19日に建立されたものだ。