綺麗な女性は美人、いわゆるイケメンは美男子…だが、なぜ「美」という漢字は「羊が大きい」と書くのか。
歴史を紐解くと「美」という漢字のルーツは、中国最古の王朝とされる殷の時代にまでさかのぼる。紀元前17世紀ころから紀元前1017年までという長きにわたった王朝が殷である。その時代に甲骨文字が生まれ、そのひとつに「羊」の下に「大」と記された文字があり、これが「美」という漢字のルーツとされている。当時の人は「大きな羊」を美しいと感じたのだろう。
その「美」の意味するところは「綺麗」だけに留まらない。「素晴らしい」「優れた」「立派」といった意味でも「美」が使われる。たとえば「美食」といえば「贅沢で美味しい料理」をいい、「美徳」といえば「道徳的に立派なおこない」をあらわす。「美談」といえば「聞いた人が感心するような素晴らしい話」のことだ。
閑話休題。
現在、日本には、北海道、東北・秋田・山形、上越・北陸、東海道・山陽、九州の新幹線があり、旅客輸送を担っている。その一方で、JRでは在来線の特急列車は激減、急行列車は皆無となった。だが、1970年代の国鉄では、全国各地で特急・急行が活躍していた。その代表格がボンネット型の特急電車である。
東海道新幹線の開業前に、東京と大阪を結んでいたビジネス特急「こだま号」でデビューした151系の電車がその草分けだったことから「こだま型」と呼ばれた。
スマートなフォルムと、鮮やかなカラーリングは、鉄道ファンならずとも目を引かれたはずだ。その後、山岳路線に対応し、耐寒耐雪仕様にもなった161系、交直両用の481系などが誕生し、全国各地を「こだま型特急電車」が駆け抜けた。
こだま型電車は運転台が高い位置にあるため、前方の視認性が向上することはいうまでもない。普通列車や急行列車よりも速いスピードで走るため安全対策といえるだろう。では、運転台の下にある「ボンネットの中身」は何か。
答えは「発電機やコンプレッサー」で、走るための電力はパンタグラフを通して架線から取り入れる。だが、車内灯や空調のための電力のために発電機を車載していたのである。また、コンプレッサーは、ドアの開閉や空気ブレーキに必要な空気をつくりだすために必要だったのである。じつは、発電機やコンプレッサーが作動すると、かなり大きな音がする。そのため客室のある車両ではなく、編成の両端に設けられたのである。つまり、ボンネット型車両は、見た目の美しさだけではなく、機能性も併せもつということ。これを「美」と言わずして…である。
見た目の美しさもいいが、いわば「機能美」にも目を向けたいものだ。